ここでは、プロペシアの発がん性リスクについて詳しく解説していきます。


前立腺癌の治療では病期診断がその後の治療法選択や予後予測に大きな影響を与えるため,できるだけ正確な病期診断を行うことが必要である。病期分類には現在では「TNM 悪性腫瘍の分類改訂第7版」(2009 年,)を用いることが推奨されており,従来使用されていたJewett Staging System は参考に止まる。病期決定のためには原発腫瘍(T),所属リンパ節(N),遠隔転移(M)をそれぞれ評価する必要がある。


(フィナステリドの長期投与が前立腺がんによる死亡率に与える影響)

病期診断を決定するための手段としては,直腸診とともに癌の進行度に応じてCT,MRI,骨シンチグラフィー,経直腸的超音波断層法等の画像診断が用いられる。前立腺生検の病理結果は病期診断には用いない。最近ではフルオロデオキシグルコース(FDG)等の各種トレーサーを用いたPET-CT が原発巣や転移巣の同定に用いられることもあるが,現在のところ病期診断にPET を用いることは一般的ではない。

前立腺癌を診断した際には,進行度を客観的に評価し,患者の予後予測と治療方針の決定のため,最初に臨床病期分類を行う。世界的に最も広く使用されているのは2009 年のUnion for International Cancer Control(UICC)分類(第7版)であり,本邦の『前立腺癌取扱い規約第4版』でもこのUICC 分類を用いている()。T:原発腫瘍,N:所属リンパ節,M:遠隔転移であり,N分類,M分類に関してはCT,骨シンチグラフィー,骨盤MRIで評価することで現在のコンセンサスは得られているが,T分類に関しては直腸診によるもの,MRI 等の画像によるものが混在しており,診断に用いたモダリティーを記載する必要がある。次に治療後の再発率や予後を予測するリスク分類が行われ,患者の全身状態,合併症,年齢を考慮した治療選択がなされる。特に限局性前立腺癌においては,臨床病期,PSA値,Gleason スコアによるD’Amico 分類()やNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)分類()が普及している。ただし,これらのリスク分類の中間リスク症例や高リスク症例は,予後の異なる多様な患者が含まれていること,,また,海外の患者のデータベースを基にしているため日本人に当てはまらない可能性があることに注意が必要である。一方,ノモグラムはリスク分類よりも多い複数の因子により,個々の患者に対する治療成績や予後予測を提供する数学的モデルである。近年,前立腺癌を含む多くの領域において,様々なエンドポイントを予測するノモグラムが作成されている。前立腺癌では,1993 年にPartin らによる前立腺全摘除術後の病理病期予測ノモグラム(Partin Table)が作成され,泌尿器科医に広く使用される契機となった。本邦でもPartin Tableと同様の趣旨で日本人のコホートによるJapan PC Tableが作成されている。ノモグラムは,患者の治療アウトカムを予測する優れたツールであり,リスク分類の不均一性(heterogeneity)をさらに層別化することが可能である。しかし,使用にあたってはノモグラムの基礎となったデータが現在の標準検査,分類法,治療モダリティーと異なる場合もあり,十分な注意が必要である。将来的には,遺伝子変異等の新たなバイオマーカーや患者の全身状態(年齢,合併症,認知機能等)の評価を加えた,総合的でより精度の高いリスク分類やノモグラムの開発が期待される。

前立腺癌の腫瘍マーカーのPSAの値が低下してしまうため注意が必要です。

前立腺がん検診の費用を押し上げる最大の要因は,過剰診断・過剰治療による余剰費用である。今後,前立腺がん検診の有効性のみならず経済効率性を改善するには,過剰診断を克服する技術革新が重要となると考えられる。

2014 年のERSPC の報告データを用いた最新の研究では,55~59 歳で検診間隔が2年のグループではICER が質調整生存年(quality-adjusted life-years;QALY)1年増加あたり7.3 万ドルであった。一般に,費用対効果に優れるか劣るかを判定するために用いられる1QALY 増加あたりのICER の閾値は,米国では5万〜10 万ドルと設定されている。7.3 万ドルという結果はこの閾値の上限値を下回っており,費用対効果に優れると判定される。これらのグループでは,生涯の前立腺癌死亡減少率は13%であり,検診発見癌の33%が過剰診断であると推計された。もっとも,63 歳を超えるグループでは,過剰診断によるQALY の減少により費用対効果が劣る計算になることも示された。

前立腺癌を見逃してしまう可能性があるため医師に申告しましょう。

また,同報告データに米国の医療費データを当てはめた費用効果分析では,1人の前立腺癌死亡を回避するために必要な費用は約522 万ドル,増分費用効果比(incremental costeffectiveness ratio;ICER)は1生存年増加あたり約26.3 万ドルとなった。また,1生存年増加あたり費用を10 万ドル未満に低減するには,治療必要数(number needed to treat;NNT)が21 人を下回る必要があると試算された。

2009 年のERSPC の中間報告データを引用した欧州での前立腺がん検診の費用分析によると,非検診群100,000 人を25 年間追跡調査すると仮定した場合,2,378 人に前立腺癌が発見され,検診・治療を含めた総費用は約3,028 万ユーロと試算された。一方,検診群100,000 人からは4,956 人に前立腺癌が発見され,その総費用は約6,069万ユーロと試算された。そのうち,PSA検診自体の費用は総費用の約5%(304 万ユーロ)に止まり,過剰診断・過剰治療にかかるコストが総費用の約39%(2,367 万ユーロ)となった。

前立腺がんは、日本でも食生活の欧米化により急激に増加しています。

これらの報告に基づいて,費用対効果を検討した医療経済評価研究がいくつか報告されている。本項では,前立腺がん検診の経済評価に関して,2009 年以降の文献を中心に解説する。

前立腺がん検診は,①の要件を満たしており,②についても近年相次いで質の高い研究結果が示されている。2009 年に「The New England Journal of Medicine」に報告されたERSPC の中間報告において,中央値9年間の経過観察後の検診群における前立腺癌死亡の相対リスク比は0.80(95%CI:0.65~0.98)となり,検診による有意な死亡率低下効果が示された。NNS は1,410 人,NND は48 人であった。さらに,2014 年に「The Lancet」に報告されたERSPC の13 年間経過観察後の解析結果でも,55~69 歳において検診群は対照群と比べて21%の死亡率低下効果を認め,NNS は781 人,NND は27 人であった。また,スウェーデン・イエテボリ研究では,中央値14 年間の経過観察後,検診群は対照群と比べて44%の死亡率低下効果を認め,NNS は293 人,NND は12 人であった。


この使い方では発がん性はないと考えられているので安心して大丈夫です。

検診の利益と不利益をまとめた本邦の厚生労働省研究班(濱島班)のガイドラインにおける,過剰診断の不利益に関する記述は参考になる。しかし,利益や不利益の多くの部分において,最新の重要な研究成果に関する考察がなされていない。そのため現時点では,『前立腺がん検診ガイドライン2010 年増補版』に準拠した一般住民向けのPSA検診の最新情報・利益と不利益等を解説した啓発資料(『PSA 検診受診の手引き』(公益財団法人前立腺研究財団発行)等)を用いた情報提供を行うことが望ましいが,全般的に前立腺がん検診の不利益に関する要因は近年その多くが改善傾向にある。

注意点は前立腺がんの腫瘍マーカーのPSAの値が半分程度になることです。

また前立腺がん検診を受診することにより臨床的に重要な癌を早期に発見することで,病状,価値観,合併症に対する受容,社会的な状況等に応じて,治療効果とQOL の低下のバランスから,最も自分自身に適した治療法を,多彩な治療選択肢から選べることも利益の1つと考えられる。

前立腺がん検診の不利益として,次に示すような問題が挙げられる。

前立腺がん検診を受診する最大の利益は癌死亡率の低下である。この事実は信頼性の高いRCT で証明されており,ERSPC では検診群は対照群に比べ13 年間の経過観察で21%死亡率が低下したことが示された。また,オーストリアのチロル地方ではPSA 検査を用いた前立腺がん検診を導入後,20 年間の経過観察により死亡率の低下が示され,すでに地域社会における有用性も証明されている。また前立腺がん検診による転移性癌リスクの低下も同様で,前述したERSPC では転移性癌のリスクが0.60(95%CI:0.52~0.70)に低下し,またスウェーデンで行われた症例対照研究でも15 年間の経過観察で0.73(95%CI:0.38~1.42)に低下したことが報告されている (転移性癌,死亡率の低下についての詳細は を参照)。

5α還元酵素阻害薬、前立腺がん発症を予防、生存は改善せず/NEJM

どのようながん検診にも,検診受診に伴う利益と不利益が存在する。前立腺がん検診は近年,RCT により死亡率の低下が明確に証明されている。しかし,受診希望者にその有効性を伝えるだけでなく利益,不利益についての情報を正確に伝えたうえで,前立腺がん検診の受診を判断してもらう必要がある。前立腺がん検診の利益,不利益については近年,大規模RCT の累積したデータより多くの検討がなされ,以前よりも明確になりつつある。ここでは,信頼できる大規模RCTからの報告を主に参考にしながら前立腺がん検診の利益,不利益について解説する。

「プロスカー」に前立腺癌予防効果、NEJM誌で原著論文が早期公開

余命を算定する方法のほかに,経時的な高齢者の健康状態を評価する手段としてInternational Society of Geriatric Oncology(SIOG)の「G8 geriatric screening tool」という,老年者に対するスクリーニング実施の判断をするための健康状態評価手法がある()。Kenis らは,「G8 geriatric screening tool」の評価手段を用いた検証で,担癌者の予後予測に有用であると報告している。Droz らは,上記の「G8 geriatric screening tool」を一次評価手法として高齢前立腺癌患者の健康状態の評価ののち,良好群(fit),脆弱群(vulnerable),虚弱群(frail)の3群に分類し,診療指針の運用手段として用いることを推奨している。良好群と脆弱群(医療介入によって良好群に改善可能な群)に関しては,個人単位での早期前立腺癌診断が推奨されている一方,虚弱群においては前立腺がん検診は推奨されていない。PSA検診の対象者に対する指針としては,暦年齢ではなく健康状態と本人の希望に応じて行うことが重要と論じている。本邦においても,様々な検診受診機会において,検診受診希望者が自身の健康に不安を抱える場合,簡易なG8 geriatric screening tool 等の健康状態評価手段を用いた検診受診推奨判定の導入を進めることは,将来の方向性として好ましい。

先述した、前立腺肥大症を対象とし、フィナステリド 5mgを4年間投与した海外臨床試験

Sammon らは,前立腺癌に罹患した患者の余命期間について,臨床医が算定した予測モデル論文と政府が広報している生命表の対比の検討を行い,過去に報告された予測モデルに優位性を見出せなかったと報告している。本研究結果からわかるように,現時点で正確な余命算定手段がない状況であることから,相応の比率で高齢者の検診受診機会が継続されている現状である。

男性型脱毛症治療薬で前立腺がん死リスク減 | Medical Tribune

がん検診の受診は本来個々の健康状態に応じた検診受診対応が重要であるが,現時点で本邦において個々の余命を勘案した検診システムを構築しているがん検診は皆無である。前立腺がん検診の受診を決定する場合,個々の受診者において,余命が10~15 年程度見込まれるか否かが重要であるといわれている。しかし,欧米においても80 歳を超える高齢者の35.3%がPSA 検診を受診している現況より(55~69 歳の検診受診率:32.3%),余命を組み入れた前立腺がん検診システムは実践されていない。

しかし,フィナステリド投与が悪性度の高い癌の発生を増加させる可能性を ..

患者ではなく健常者集団を対象とするがん検診は,①低侵襲であり,②RCT で死亡率低下効果が証明されており,かつ③費用対効果に優れていることが理想とされる。

生検によりフィナステリド 5mg 群ではグリーソンスコア 7~10 の前立腺癌が.

本邦における前立腺がん検診においても,Sawadaらは55~59 歳,60~64 歳のPSA 値が0.6~1.0ng/mL(低値群)と1.1ng/mL 以上(高値群)の群において,10 年後の前立腺癌発症のリスクは高値群が有意に高いことを報告している。

前立腺がんの患者さまに男性ホルモンをしっかり下げるホルモン治療を行うと ..

また,Carlsson らもコホート内症例対照研究における将来の検診群と非検診群の前立腺癌死リスクの比較により,60 歳時にPSA<1.0ng/mL であれば,それ以降のPSA 検診は不要である可能性があると論じている。一方,60 歳の段階でPSA≧2.0ng/mLであれば,検診継続は癌死低下効果の点で有益性があり,1.0~2.0ng/mL の範疇であれば,PSA 検診継続は受診者と医師との相談により個別に判断すべきとしている。

割れていなければ触っても大丈夫です。 3.この薬は元々前立腺肥大の薬で、前立腺肥大や前立腺がんの検診などで行う血清前立.

Vickers らは前立腺癌の転移進展や前立腺癌死予測の観点から,40~55 歳時のPSA 値(PSA 基礎値)を用いてリスク分類の解析を行った。その結果,45~49 歳時,51~55 歳時のPSA 値のカットラインをそれぞれ1.6ng/mL,2.4ng/mL に設定した場合,カットライン以上の男性(高リスク群)の25 年以内の転移性癌進展リスクは,カットライン未満の男性(低リスク群)と比べ7.61 倍,11.44 倍と有意に増加していた。よって,上記年齢において高リスク群となった場合,より徹底した検診継続を推奨し,低リスク群においては40 歳代後半,50 歳代前半,60 歳における3点の定点的なPSA 測定でも十分な可能性がある。

プロペシア錠とフィナステリド錠(後発医薬品) · 前立腺がんの検診を受ける予定のある方へ

European Association of Urology(EAU)の関連ガイドラインでは,暦年齢ではなく,10〜15 年の余命を有し,全身状態が良好であり,検診の利益・不利益に基づいた自己決定が可能な受診者に対しては,早期発見の目的で個々のリスクの程度を勘案したテーラーメイド検診を提供すべきであると記載され,50 歳を超えた段階で将来の前立腺癌発症リスクを把握するため,早期のPSA検査が推奨されている。また,①前立腺癌の家族歴を有する45 歳を超えた男性,②アフリカ系米国人,③40 歳,60 歳の時点でのPSA値がそれぞれ1.0ng/mL 超,2.0ng/mL 超の男性が前立腺癌発症に対するリスク群として明記されている。