「フォシーガ」、CKDの適応追加 国内初、糖尿病合併の有無問わず


2022年6月に承認されたカナグルはフォシーガと同じSGLT2阻害薬ですが、2型糖尿病を合併していることが処方の条件なので、高血圧が原因の腎硬化症や慢性糸球体腎炎の場合には処方してもらえないと思います。また、「eGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者では、本剤の腎保護効果が十分に得られない可能性があること、本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがあることから、新規に投与しないこと。」と明記されており、フォシーガよりも処方されにくい内容となっています。
副作用に関してはフォシーガと同様な内容です。


フォシーガとは?(SGLT-2阻害薬:腎臓病の新しい治療薬として)

フォシーガには5 mg錠と10 mg錠がありますが、慢性腎臓病(CKD)の治療を目的とする場合は10 mg錠を1日1回服用することになります(5 mgでの有効性は確認されていないため)。ところがインスリンを投与していると血糖値が下がりすぎる場合があるのでインスリン量の調整が必要となり、『糖尿病治療に精通した医師と連携して、(中略)5 mg 1日1回で投与開始し、血糖コントロールが安定したら速やかに10 mgに増量してください』と添付文章に明記されています。インスリンを打っている場合は注意してくださいね。

添付文章11項(副作用)には慢性腎臓病に特有の副作用は追記されなかったことから、下記の「フォシーガを服用するときの注意点」に気をつければ大丈夫です。

併している CKD 患者において,SGLT2 阻害薬は良い適応

添付文章の4項(効能又は効果)には、『〇慢性腎臓病、ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く』と追加されただけで、ACE阻害薬やARBといった降圧剤の併用には触れられていないので、降圧剤が処方されていなかったり、カルシウム拮抗薬のような他の降圧剤を飲んでいても大丈夫なようです。

尚、添付文章17項(臨床成績)では、今回の承認の元になったフォシーガ国際共同プラセボ対象二重盲検比較試験において、『本剤投与中にeGFRが25mL/min/1.73m2未満に低下した場合でも本剤投与を継続可とし、さらに透析が必要となった場合でも本剤投与は継続可とした』と書かれていることから、eGFRが25を切っている場合にフォシーガを使うか否かは、(最終的には)患者と医師の考え次第なのだと思います。

腎臓病)慢性腎臓病(CKD)の治療(前編) | 亀田グループサイト

米国スタンフォード大学のグループはフォシーガの臨床試験から「eGFRが30未満のステージ4慢性腎臓病患者」と「eGFRが30以上あるステージ2や3の患者」の間に腎保護効果の差や副作用の差があるか?をサブ解析しました。

ただし、フォシーガの腎保護効果について明らかになっていることと、明らかになっていないことがあり、積極的に使用したい場合とそうではない場合を筆者の主観で以下のように分けてみました。

薬品工業の共催セミナーでSGLT2阻害薬「フォシーガ」について、8月に適応追加した慢性腎臓病(CKD)に対する投与対…

また、添付文章8.2項には『糖尿病の血糖コントロール改善を目的として使用している患者においては、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討すること』と書かれていますが、これは「eGFR 45未満ではフォシーガの血糖コントロール効果が得られなくなるので、糖尿病治療薬としては中止を検討すること」という意味合いであり、慢性腎臓病治療薬として中止を求めているわけでは無いようです。

『eGFRが25mL/min/1.73m2未満の患者では、本剤の腎保護作用が十分に得られない可能性があること、本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがあることから、投与の必要性を慎重に判断すること(添付文章5.7項より抜粋)』と書かれており、腎機能障害の悪化に十分注意すれば、全く使えないわけではなさそうです。


SGLT2阻害剤フォシーガ、慢性腎臓病治療薬開発でFDA ..

2021年1月13日: アストラゼネカは、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(製品名: フォシーガ)について、2型糖尿病の有無にかかわらず、新規に発症、又は悪化した成人の慢性腎臓病の治療薬として、アメリカにおいて優先審査に指定されたことを発表した。

フォシーガ 慢性腎臓病治療薬として米国で承認取得 アストラゼネカ

予想通り、糖尿病の有無に関わらず使えるようになったわけですが

・eGFRが25未満でも使えるのか?
・降圧剤(ACE阻害薬やARB)の併用は必須なのか?
・慢性腎臓病特有の副作用はあるのか?

といった点について、改訂された添付文章から抜粋してみます。

DAPA-CKD試験は、プラセボを対照としたフォシーガ®(ダパグリフロジン) ..

フォシーガは糖尿病の治療薬として使われていましたが、血糖値を下げるだけでなく腎機能を保護する効果も期待され、糖尿病の患者さんには積極的に使用されていました。

☛現在(2024 年 5 月)、CKDに適応を持つSGLT2阻害薬は、ダパグリフロジン(フォシーガR)、

2020年にこの腎臓を保護する効果は糖尿病じゃない腎臓病の患者さんにも効果があるという報告が出て、2021年9月より日本で糖尿病がない腎臓病にも保険適用が通り、医療機関から処方することが可能となりました。

病非合併の CKD 患者に対して低血糖及びケトアシドーシスに関する注意喚起は不要と考えた。 Page 25

アストラゼネカ(製造販売元)と小野薬品工業(販売)はフォシーガについて、2型糖尿病合併の有無に関わらず、「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」の効能又は効果の追加承認を取得したと発表しました。

・ 糖尿病 “非” 合併 CKD 患者:蛋白尿陽性の CKD(IgA 腎症や巣状 ..


このブログを最初に書いた2021年8月5日時点では慢性腎臓病(CKD)治療薬としてのフォシーガは正式承認されていないので、どのような慢性腎臓病(CKD)患者がフォシーガ治療の対象になるのか?は明らかではありませんでした。

しかし、フォシーガの国際的な臨床試験(DAPA-CKD)では糖尿病の有無を問わない4,304例の慢性腎臓病(CKD)患者で臨床試験が行われているので、糖尿病でなくてもフォシーガが使えるようになるのでは?と期待しています。

しかし、DAPA-CKD試験ではeGFRが25以上75未満の慢性腎臓病(CKD)患者であり、尚且つ、ACE阻害薬(またはARB)という血圧を下げる薬を4週間以上服用している患者が臨床試験の対象になっています。

ということは、日本の慢性腎臓病(CKD)治療において、
①eGFRが25よりも下の場合は使えるのか?
②ACE阻害薬やARB以外の血圧の薬(カルシウム拮抗薬など)を飲んでいると使えないのか?
という2点が気になります。正式に承認されたら情報を追記しますね。
【参考】

SGLT2阻害薬(商品名フォシーガ)は、腎臓での糖の再吸収を阻害すること ..


さて、本題に入りますが、販売名フォシーガ(一般名称:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)も、2022年6月に承認されたカナグル(一般名称:カナグリフロジン水和物)も、SGLT2阻害薬に分類される糖尿病の治療薬です。

腎臓にあるSGLT2というポンプ(尿中に捨てられたブドウ糖を再吸収して血液に戻すポンプのような物質)の働きを阻害することで、ブドウ糖を尿中に捨てて血糖値を下げる働きがあります。

フォシーガは日本において2014年に「2型糖尿病」、2019年に「1型糖尿病」、2020年に「慢性心不全」の治療薬として承認されています。

そして2021年、「慢性腎臓病」の治療薬として承認されることになりました。
なぜ心不全や腎臓病に効くのか?今のところメカニズムは明らかではありませんが、メカニズムが解明されれば更に効果的な治療薬の開発につながると期待されます。
【参考】

SGLT-2阻害薬のダパグリフロジンが2型糖尿病合併の有無に関わらず

フォシーガ錠は5mgと10mgがあり、必要性や用途に応じて量を調整していきます。

フォシーガ錠10mgの効果・効能・副作用 | 薬剤情報 | HOKUTO


SGLT2阻害薬は糖尿病患者の血糖値の乱れを安定させるだけでなく、(作用機序は解明されていませんが)腎臓や心臓を守ってくれる作用を発揮します。
しかし、「良薬は口に苦し」というようにいくつかの懸念材料(副作用)もあります。
eGFRの低下速度が緩やかになり「透析を遠ざける」というベネフィットと以下に書くようなリスク(まれに出現する副作用)を天秤にかけて、SGLT2阻害薬(フォシーガやカナグル)を使うか否かを医師と話し合ってください。

社内資料:国際共同第III相試験-DAPA-CKD試験-(承認時評価資料) 本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた


2021年8月に承認されたのはSGLT2阻害薬のなかの「フォシーガ」という薬なのですが、テレビや新聞で「国内初の慢性腎臓病(CKD)治療薬」と報道されているのを知って、純炭社長的には???と思ってしまいました。

というのも慢性腎臓病(CKD)用剤である「クレメジン(球形吸着炭)」が1991年に承認されているからなのです。クレメジンを開発したクレハ(旧呉羽化学工業)さんは悔しい気持ちになっているのでは?

余談ですが、私、就職活動でクレハの医薬品部門を受けて役員面接で見事に落っこちました(笑)でも、クレハを恨んではいませんよ。

おかげで中外製薬の研究所に就職して腎性貧血治療薬の創薬に携われた訳ですし、今でもラップは「クレラップ」を愛用しています(笑)。

【参考】

(7月28日の専門部会議事録は今のところ厚生労働省ホームページにアップされていませんでした)

重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないでください。

8.2. 本剤投与中に、血清クレアチニン上昇又はeGFR低下がみられることがあるので、腎機能を定期的に検査すること。腎機能障害のある患者では経過を十分に観察し、特に重度腎機能障害患者に本剤を投与する際には、腎機能障害悪化に注意すること。糖尿病の血糖コントロール改善を目的として使用している患者においては、継続的にeGFR45mL/min/1.73u未満に低下した場合は投与の中止を検討すること〔5.1、5.2、5.6、9.2.1、9.2.2、17.1.1参照〕。

フォシーガの副反応は以下のようなものがあります。


純炭粉末公式専門店のお客様にお届けしているでも紹介したSGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)治療薬として承認申請されましたね。

昨日もお客さまから「慢性腎臓病の治療薬が出たってテレビで見たんだけど、どんな薬?」というお問合せがありました

腎機能障害のある患者においては経過を十分に観察してください。

本剤投与中に、血清クレアチニンの上昇又はeGFRの低下がみられることがあるので、腎機能を定期的に検査してください。
腎機能障害のある患者においては経過を十分に観察してください。

〈慢性心不全、慢性腎臓病〉

9.1.4. 1型糖尿病を合併する慢性心不全患者及び慢性腎臓病患者:ケトアシドーシスを起こすおそれがある(1型糖尿病を合併する慢性心不全患者及び1型糖尿病を合併する慢性腎臓病患者を対象とした臨床試験は実施していない)〔7.3、8.6参照〕。