(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」より)
また、デキサメタゾンの服用により、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、消化性潰瘍、糖尿病、精神障害などの重篤な副作用があらわれる例が報告されています。これらの副作用があらわれた場合における対応について、適切な指導を行うことも求められています。
(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」より)
メサデルムと同じ成分の市販薬はありません。ただし、メサデルムと同じストロングクラスの成分を含むステロイド外用薬は、ドラッグストアなどで購入できます。
もっとも、成分や添加物が異なるため、まったく同じ効果が得られるとは限りません。また、適応もメサデルムとは異なるため、市販薬をメサデルムの代わりに使用するのはおすすめできません。
市販薬を5~6日ほど使用しても症状が良くならない場合、あるいはかえって症状が悪化する場合は使用をやめ、診察を受けるようにしてください。
デキサメタゾンによる確実な治療効果を得るためには、初回服用後から10日間にわたり継続して服用することが必要です。そのため、コンプライアンスを意識した服薬指導が重要です。
(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」より)
気管支喘息や慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)等では気道に慢性的な炎症があることが共通の特徴であり、気道上皮傷害、気管支平滑筋の過敏症、気道粘膜の浮腫や粘膜下腺の過形成およびそれに伴う気道分泌物の充進と気道クリアランス障害などの多様な病態が原因となり、ほとんどが難治性である。グルココルチコイド製剤を用いると一定の効果は挙がるが、副作用が問題となる。漢方薬を併用すると、グルココルチコイド依存性の喘息患者でグルココルチコイドの減量あるいは離脱が可能であることが示唆されている。このような背景から、我々は、奏効確実で副作用の少ない新しい治療法の開発を目的として、漢方薬およびその成分のステロイド様抗炎症作用を病態モデル動物を用いて評価するとともに、転写調節作用をグルココルチコイド感受性のプロモーター遺伝子を導入した細胞を用いて分子薬理学的に調べた。
デキサメタゾンの主な副作用としては、感染症の増悪、続発性副腎皮質機能不全、糖尿病、消化性潰瘍、消化管穿孔、膵炎、精神変調、緑内障、血栓塞栓症などが報告されています。服用中止後に、発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、ショック等の離脱症状があらわれる場合もあるので、注意が必要です。
(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」より)
2)ステロイド様転写調節作用
グルココルチコイド感受性MMTVプロモーターを含むルシフェラーゼレポータープラスミドをA549ヒト肺腺癌細胞にトランスフェクトした。この系においてデキサメタゾンは明らかにプロモーター転写を活性化した。その効果はグルココルチコイド受容体のアンタゴニストRU486の同時添加により完全に阻害された。この系において柴朴湯および麦門冬湯単独では転写を活性化しなかったが、デキサメタゾンを合せて処理することにより、転写活性はデキサメタゾン単独よりも有意に強くなった。同様な転写活性の増強が、柴朴湯と麦門冬湯に共通の構成生薬である甘草とその主成分であるグリチルリチンにみられた。これらの知見から麦門冬湯はグルココルチコイド依存性プロモーターの活性化によってグルココルチコイドの効果を増強しており、またグリチルリチンの効果もグルココルチコイド依存性プロモーターの活性化によるものと推定される。グリチルリチンはグルココルチコイドの不活化酵素であるタイプ11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD2)を阻害することが報告されている。11β-HSD2はグルココルチコイドをNAD依存的に不活性な11-ケト体に変換する。我々の検討の結果でも、グリチルリチンによる11-βHSD阻害作用が重要であることが確認された。11β-HSD2は肺の気管、気管支、肺胞の上皮細胞のみに発現している。この局所的発現は他のグルココルチコイド感受性細胞に影響せずに上皮細胞のみに作用することを示唆している。さらにこれらの結果と相関して、グリチルリチンはデキサメサゾンによる粘液産生細胞(NCI-H292cell)の粘液遺伝子MUC2およびMUC5ACのmRNAの抑制を著明に充進し、グリチルリチンによるグルココルチコイド依存性転写調節作用の充進が内因性の遺伝子でも生じることが分かった。
グルココルチコイドは,グルココルチコイド応答エレメント(GRE)との結合を介した直接の転写促進作用と、NF-κBやAP-1などの炎症を惹起する転写因子の作用を核内で抑制する転写抑制作用を有している。そこで、麦門冬湯はグルココルチコイドと類似した転写調節作用機序をもつのではないかと考え、種々の検討を行った。
まず、NF-κB依存的なIL-8プロモーター遺伝子をA549肺上皮細胞に導入し、TNF-αによるIL-8プロモーターの活性化に及ぼす影響を調べると、デキサメサゾンは活性化を抑制したが、麦門冬湯も用量依存的にIL-8プロモーターの活性化を抑制することが認められた(図3)。前述したように、麦門冬湯は単独ではGREモチーフを有するMMTVプロモーターのA549細胞における転写活性を促進しないが、デキサメサゾンに添加すると、デキサメサゾ単独のほぼ2倍の転写活性を示す。
これらの成績を総合すると、麦門冬湯はグルココルチコイドの転写促進作用を増強するとともに、直接的な転写抑制作用を示すという特性を有すると考えられる。
同様の特性は麦門冬湯の構成生薬である甘草の主成分グリチルリチンにも認められる。グリチルリチンは単独では転写促進作用を示さないが、デキサメサゾンの転写促進作用を用量依存的に増強することや、TNF-αで惹起したIL-8プロモーターの活性化を用量依存的に抑制する転写抑制作用を示すことが確認されており、麦門冬湯の作用の一部がグリチルリチンによる可能性が示唆される。そこで、IL-8プロモーターの活性化抑制がNF-κBの抑制によるのかどうかを明らかにするために、NF-κBコンセンスのモチーフのみを有するプロモーターの活性化に及ぼす影響を調べると、グリチルリチンはデキサメサゾンと同じように抑制することが認められた。Real time PCR法での検討では、グリチルリチンはTNF-αで惹起したIL-8 mRNAの発現をデキサメサゾンと同様に抑制することも確認された 。
3)粘液線毛輸送に対する作用
粘液線毛系の測定方法について種々検討を行い、再現性,簡便性、そして薬効評価に際しての種々の受容体、あるいは細胞内でのシグナルトランスダクションの関係等について、ヒトとあまり大きな相違がみられないウズラを用いた粘液線毛輸送能測定装置を作成して実験系として用いた。
麦門冬湯とその活性成分であるオフィオポゴニンの投与により、用量依存的な粘液線毛クリアランスの促進が認められた。
粘液線毛クリアランスの阻害物質にはいろいろあるが、DNAは非常に強い阻害活性を示すことが知られている。DNA投与によって粘液線毛クリアランスは著しく阻害され、DNAの分解酵素であるDNaseの投与によって粘液線毛クリアランスは回復する。2 μlの溶媒に溶かしたDNA 15 μgを約1/30秒程度の瞬間的局所投与によって惹起された気道粘液線毛クリアランス低下は、麦門冬湯及びオフィオポゴニンによって著明に回復した。
次にヒト好中球エラスターゼ(HNE)による粘液線毛輸送の障害に対する麦門冬湯とオフィオポゴニンの作用についても検討した。ウズラ気管の線毛細胞にHNEを局所投与すると、細胞の配列の乱れとともに細胞の脱落が生じ、エラスターゼ阻害薬を投与すると傷害された線毛細胞は修復する。HNE投与によって粘液線毛輸送能は非常に強く、しかも持続的に阻害されるが、麦門冬湯の投与で、輸送能は80%近くまで回復する。
HNE投与による気管粘液中の成分、特にDNA、フコース、プロテインを測定し、麦門冬湯投与による変化について検討した。HNE投与によってDNA、フコース、プロテインは著明に増加するが、麦門冬湯投与でほぼ元の数値に回復した。HNE投与による粘液線毛輸送能の低下に対して、オフィオポゴニン単独投与でも麦門冬湯と同様、阻害された粘液線毛輸送の回復が認められた。
呼吸器作用薬で気道の閉塞を改善する薬剤はあまりない。β刺激薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ロイコトリエン拮抗薬、あるいはエラスターゼ阻害薬などは、個々の実験系ではかなりの効果が認められるが、全体的な作用としての気道粘膜・粘液修復、気道クリアランス改善に対しては明確な実験的証明が得られ難い。気道の粘液線毛クリアランスを総合的に回復させることが必要であり、麦門冬湯はステロイド類似のmucoactive drugとして特徴的な作用を有する方剤であるため高い有効性が得られるのであろう(図2)。
(一般社団法人日本アレルギー学会「喘息予防・管理ガイドライン2021」より)
(serum albumin)は血漿の中で最も豊富に見られるタンパク質だが、デキサメタゾンも他の薬やホルモンと同様にこの血清アルブミンによって身体全体に運ばれる。ところがこのタンパク質に関する因子のため、COVID-19に関連する炎症を治療するときに安全で効果的となるようデキサメタゾンを投与するのは難しい。例えば、糖尿病の患者では、タンパク質中の重要なアミノ酸に対して糖化(glycation)の過程を経て糖分子が結合していることがよくある。こうなると薬のタンパク質への結合が妨げられことがある。イブプロフェン(ibuprofen)のような一般的鎮痛剤なども血清アルブミン上にある同じ結合部位を使い競合するので、同時に服用するとデキサメタゾンの輸送が妨げられる。さらに、肝臓病、栄養失調、高齢などのCOVID-19の危険因子に加え、ウイルス自身も患者の血清アルブミン濃度を下げることがある。この複雑な事情により、内科医が血中におけるデキサメタゾンの遊離:結合の相対比を見積もり、薬の毒性増加、副作用、薬効の低下を招く可能性について判断するのは難しくなっている。
薬であるデキサメタゾンの構造は天然のコルチゾールの構造と非常によく似ている。このことにより、デキサメタゾンは糖質コルチコイド受容体にぴったりと結合し、同じように体内の炎症を解消する遺伝子発現の変化を引き起こす。この活性のため、デキサメタゾンはCOVID-19の治療において特に効果的である。なぜなら、コロナウイルスによる損傷はウイルス自体によるものだけではなく、制御できない炎症によるものでもあるからである。ところが、デキサメタゾンの抗炎症効果は、使い方や時期を誤ると害をおよぼしかねない。COVID-19の初期段階において、身体はウイルスを撃退するために免疫系を動員する必要があるので、初期の重症ではない患者にデキサメタゾンを使うと、うかつにも患者の状態を悪化させてしまうかもしれない。
【薬剤師向け】「デキサメタゾン」とは?効果や副作用、薬価などを解説
糖質コルチコイドは、(estrogen receptor)とともに核内受容体の仲間(ファミリー)に属している。これはリガンド結合ドメイン(ligand-binding domain)、DNA結合ドメイン(DNA-binding domain)、トランス活性化ドメイン(transactivation domain)という3つの部分で構成されている。ヒトの場合、この受容体のリガンドとして最もよくあるのがストレスホルモンの一つコルチゾール(cortisol)である。受容体がコルチゾールに結合すると、受容体の構造が変化し細胞質から核へと移動する。核内では、標的DNA配列に結合し遺伝子発現に影響を与えることができる。糖質コルチコイド受容体は活性化補助因子(coactivator)とも相互作用し、遺伝子発現のしくみをさらに調整することができる。受容体は柔軟なリンカーでつながれたいくつかのドメインで構成されているので、ドメインの構造は別々に決定された。デキサメタゾンに結合したリガンド結合ドメインの構造はPDBエントリー、DNAに結合したDNA結合ドメインの構造はPDBエントリーのものを示す。トランス活性化ドメインはここに示していない。これらのドメインがすべて一緒になり、コルチゾールの結合によって引き起こされる最初のメッセージが伝達される。
デキサメサゾン軟膏0.1%「サトウ」(一般名:デキサメタゾン0.1%軟膏) ..
デキサメタゾンは、抗炎症効果のあるお薬なので、もともとは広く医療に取り入れられている薬です。
そのため、個人輸入でも手軽に入手することができます。
[PDF] デキサメタゾン COVID-19 小児患者に対する治療薬としての位置付け
デキサメタゾンとして6mgを1日1回、10日間にわたり服用します。体重40kg未満の患者さまでは0.15mg/kg/日へ減量を考慮し、肥満・過体重例では用量につき個別に検討することが推奨されています。また、患者さまの状態によっては経口・経管以外に、静注が選択される場合もあります。
して、COVID-19 に対するデキサメタゾンのランダム化比較試験が行われ、その結果が発表 ..
デキサメタゾンは副腎皮質ホルモン製剤であるため、効果・効能は多岐にわたります。具体例としては、慢性副腎皮質機能不全、関節リウマチ、エリテマトーデス、うっ血性心不全、気管支喘息、悪性リンパ腫、重症感染症などがあげられます。詳細については、添付文書を確認するようにしてください。
デキサメタゾン製剤(デキサメタゾンセイザイ)とは? 意味や使い方
糖質コルチコイド(Glucocorticoid、グルココルチコイド)の薬は炎症や自己免疫疾患を治療するため広く処方されており、最近ではCOVID-19(SARSコロナウイルス2型感染症)の重症患者の治療にも用いられている。COVID-19は、発熱や息切れなどの症状から、多臓器不全などの重い合併症への急速に進行する。重症患者は「サイトカインストーム」(cytokine storm)を経験するが、このときにはもはやコロナウイルスに対する炎症反応を抑えることはできず、サイトカイン(炎症の分子メッセンジャー)の異常な産生がさらなる合併症を引き起こしてしまう。臨床試験では、糖質コルチコイド受容体に結合する強力な抗炎症薬であるデキサメタゾン(dexamethasone)を低用量で投与することにより、COVID-19入院患者の死亡率が低下したことが示されている。
一般名. デキサメタゾン (JP18); Dexamethasone (JP18/USP/INN) ; 米国の商品.
開封済みのメサデルムは、誤使用を避けるために廃棄してください。未開封のメサデルムは、室温で保管しておけば使用期限まで使用できますが、自己判断で塗布するのは避けてください。
ステロイド外用薬は、症状や部位に応じた適切なものを使用しなければ、十分な効果が期待できないばかりでなく、副作用が生じる可能性が否定できません。
皮膚に何らかの症状がある場合は診察を受けたうえで、適切な薬の処方を受けてください。その際、残薬があることを伝えてくだされば、処方内容や処方量に反映致します。
デキサメタゾン(デキサメサゾン) · トルナフテート(トルナフタート) · 土槿皮チンキ ..
メサデルムを長期間連用すると、薬を塗布した部分にニキビのような症状(ステロイドざ瘡)があらわれることがあります。ただ、発現率は非常に低く、再審査終了時におけるステロイドざ瘡の報告は0.1%にとどまっています。
副作用であらわれたステロイドざ瘡は治療が終了すれば少しずつ減ってきますが、症状によっては薬の漸減や変更も考慮しますので、気になる症状がある場合は診察時にご相談ください。
デキサメサゾン2㎎連日8日投与。糖尿病などステロイド全身投与危惧症例でも安 ..
新型コロナウイルス感染症の重症患者では、肺障害および多臓器不全をもたらす全身性炎症反応を発現することが確認されています。ステロイドは抗炎症作用を有するため、デキサメタゾンにはこれらの有害な炎症反応を予防または抑制する可能性が示唆されており、前述の試験によって効果が裏付けられました。
デキサメタゾンは合成副腎皮質ホルモンとして強力な抗炎症作用をもち、副作用の少な
顔や陰部は皮膚が薄いため、体のほかの部位に比べてステロイドの効果があらわれやすい一方で、副作用の発現リスクも高くなります。メサデルムを使用する際は、指示された期間を超えて長期間連用したり、自己判断で広範囲に塗布したりしないようにしましょう。
デキサメサゾン軟膏0.1%「イワキ」・デキサメサゾンクリーム0.1%「イワキ ..
2)気道粘液
健常な気道は高分子多糖体に富む粘液で覆われており、それはコアタンパクとしてセリン、スレオニンに富む反復配列ドメインをもち、O-グリコシド型でオリゴ糖が結合している。気道粘液多糖タンパクは気道粘膜の保湿・潤滑作用だけではなく、線毛輸送による異物の捕捉と除去を含む多様な防御機能をもつ。しかしながら、過剰な粘液産生は慢性気管支炎、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症などの気道疾患の特徴である。これらの疾患において、気道への多形核白血球の浸潤と1次感覚神経終末からのサブスタンスPの遊離がみられる。サブスタンスPは多形核白血球の活性化を通して気道上皮細胞の粘液分泌に影響していると考えられる。この観点から我々は気道炎症の状態を再現するためにハムスター気管上皮細胞の培養系およびサブスタンスPまたは他の刺激剤により活性化した多形核白血球と気管上皮細胞の混合培養系を用いて麦門冬湯の粘液調節作用を評価した。麦門冬湯のろ過液、フラボノイドとサポニンを含む疎水性画分と糖とペプチドを含む親水性画分において、単独培養した気管上皮細胞の通常の高分子多糖体の分泌には影響しなかったが、気管上皮細胞と多形核白血球の混合培養系において麦門冬湯のろ過液はサプスタンスP誘導性の粘液(高分子多糖体)の分泌を有意に抑制した。粘液遺伝子発現についてNorthern blotおよびRT-PCR解析の結果、s-HTE細胞およびNCI-H292細胞にはMUC2とMUC5mRNAの発現が認められた。麦門冬湯とデキサメタゾンはMUC2およびMUC5mRNAの発現を濃度依存的に抑制した。
これらの成績は気道炎症に伴う杯細胞の過形成、粘液分泌異常の機序を解明する上での重要な基礎データになり得る。
ぬり薬 軟膏とクリームの違い · ステロイド外用薬を使用される患者様へ
1)肺サーファクタント
肺サーファクタントは肺胞型上皮細胞により合成・分泌され、肺胞上皮表面に単分子膜を形成する。それにより直径200 μm内外の大小の球形を呈するテニスコートの広さにも匹敵する肺胞表面をわずか約20 mlで被い、肺胞自体の弾性と界面の表面張力による収縮作用、特に肺胞気-液界面の表面張力を低下させ、肺胞の虚脱による無気肺化を防ぎ、安定した換気能力を維持する。この役割に加えて、肺サーファクタントは粘液線毛クリアランスに重要であり、炎症性メディエーターは粘液線毛輸送を抑制するが、肺サーファクタントはこの粘液線毛輸送の抑制に対して保護効果があることを明らかにした。
麦門冬湯のろ過液で肺胞型上皮細胞を処理すると肺サーファクタントの基礎分泌率は有意に増強した。その作用はβ2-アドレナリン受容体の刺激薬に似ている。分泌の増強効果はプロテインAキナーゼ阻害剤であるH-89の前処理によって阻害されたが、β2-アドレナリン受容体のアンタゴニストであるプロプラノロールでは阻害されなかった。我々はまた、麦門冬湯が有意にまた連続的に細胞内のCa2+濃度を増加させることを見出した。炎症状態を再現し、肺サーファクタントの過剰分泌における麦門冬湯とその主要活性成分の一つであるステロイドサポニンのオフィオポゴニンの効果を調べるために肺胞型上皮細胞とサブスタンスPで活性化した多形核白血球の混合培養系を用いた。麦門冬湯とオフィオポゴニンは過酸化水素により増加した分泌を有意に阻害した。これらの結果は麦門冬湯が肺サーファクタントに対して特徴的な分泌増強効果をもち、炎症性の量的・質的過剰分泌を正常化することを示唆している。その機序について検討したところ、β2-アドレナリン受容体遺伝子の発現が関与していることが分かった。
肺胞型上皮細胞のβ2-アドレナリン受容体mRNA発現量はデキサメタゾン処理により増加し、β1-アドレナリン受容体mRNA発現量は有意な影響を受けない。麦門冬湯ではデキサメタゾンとは異なり、肺胞型上皮細胞のβ2-アドレナリン受容体mRNA発現量は影響を受けないが、β1-アドレナリン受容体mRNA発現量は有意に増加する。麦門冬湯によるβ1-アドレナリン受容体遺伝子発現の選択的作用のメカニズムはまだ不明であるが、その効果は慢性気道疾患における麦門冬湯の有効性に寄与するであろう。なぜなら、β1-,β2-アドレナリン受容体は共に肺サーファクタントの分泌を仲介するからである。