[PDF] COVID-19肺炎に対する 量デキサメタゾンの治療効果



COVID-19診療において抗炎症薬のデキサメタゾンが頻用されているが,第5波では多くのCOVID-19症例に対して日本全国で一斉にデキサメタゾンが処方されたため,また,自宅療養中の症例に対しても処方が推進されたために,デキサメタゾンの出荷調整がかかってしまった時期を経験した。病院にデキサメタゾンが残りわずかという状況に出くわし,プレドニゾロンやメチルプレドニゾロンなど院内に残っているステロイド製剤でなんとか乗り越える必要があった。当時,「病院内でステロイド製剤が底を突くかもしれない状況が実際にありうるとは」と,本当に背筋が凍る思いで日々過ごしていたことが思い出される。


[PDF] COVID-19中等症Ⅱに対するレムデシビル,デキサメタゾン

コクランデータベースでCOVID-19に対する全身性ステロイド投与の有効性について検討された報告もある。11のランダム化比較試験,8075例,中等症以上の症例が対象となっており,全身性ステロイドと標準治療が比較検討されている。ここで集積された全身性ステロイド治療症例の約75%がデキサメタゾンで加療されていた。この研究からは,ステロイド投与群と非投与の標準治療群で全死亡率の有意差は証明されなかった(図10)19)。このメタ解析の結果を見ると,総数の全死亡率はリスク比0.89,95%信頼区間(confidence interval:CI)が0.80~1.00であり,統計学的には有意差がないということになるが,このレビューの結論では,全身性ステロイド治療は臨床的には軽度の改善効果を認めるのだろう,と考えられている。

さらに,人工呼吸管理が必要なCOVID-19症例に対するステロイドの効果を検証した研究で,デキサメタゾンとメチルプレドニゾロンを比較したサブグループ解析ではメチルプレドニゾロン投与群において生存率が42%高かったという結果(図8)が示された。

入院COVID-19の生存日数は?デキサメタゾン6mg vs.12mg/JAMA

デキサメタゾン以外のステロイド製剤のCOVID-19に対するエビデンスは乏しいが,メチルプレドニゾロンの報告をいくつか紹介したい。イランから報告されたランダム化比較試験で,日本での「中等症Ⅱ」以上の酸素投与が必要なCOVID-19症例に対して,デキサメタゾン(6mg固定用量)投与群とメチルプレドニゾロン(2mg/kg)投与群が比較検討された。この研究は86例と少数例での検討であるが,メチルプレドニゾロン投与群では投与5日目,10日目の臨床的な状態がデキサメタゾン群に比べて有意に改善した。また,入院中に死亡した症例を除外した検討では,メチルプレドニゾロン群で入院期間の平均値が7.43日とデキサメタゾン群の10.52日と比較して有意に短いという結果であった。


次にステロイドの投与期間や投与開始日について考えてみよう。『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6.0版』では,「デキサメタゾンとして6mg 1日1回10日間まで」と記載されているのみで,最適な投与期間や投与開始日については詳しく言及されていない。

「中等症 COVID-19 患者に対する外来デキサメタゾン治療の検討」

以上の結果から,実際の現場では酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」以上のCOVID-19に対してデキサメタゾン6mg(実際の臨床現場にて点滴でステロイドを投与する場合には,静注用のデキサメタゾン製剤が6.6mg規格のため,6.6mg/日投与されていることが多い)または同力価のステロイドで治療している。逆に,わが国の『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第6.0版』(2021年11月公開)においても,酸素投与を必要としない症例に対してはステロイドを使用すべきではなく,予後をむしろ悪化させる可能性が示唆されている,としている。

当院(日本鋼管病院/こうかんクリニック)では,筆者と薬剤部で協力してデキサメタゾン6mgと同力価のステロイド換算表を作成し,院内で周知することとした。デキサメタゾンはCOVID-19治療以外でも,たとえば様々な癌腫の治療としても重要な薬剤であり,本当に必要な症例に適正使用されるよう努めた。実際には,プレドニゾロン内服に変更して,多くの症例は乗り切った印象(下記の処方例)がある。

COVID-19 で入院した患者を対象とした非盲検対照試験で、患者を、デキサメタゾン(6mg/

COVID-19では経過中に全身性の炎症反応を発現し,広範な肺障害や多臓器不全を引き起こすことが知られている。このような過度の炎症反応を抑える,または予防する目的で,抗炎症薬としてステロイドで加療されることがある。特に酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」「重症」に分類されるCOVID-19に対しては,デキサメタゾンによる治療が推奨されている。なお,デキサメタゾンは重症感染症への適応がある。デキサメタゾンをはじめ,COVID-19に対するステロイドのエビデンスについて振り返ってみたい。

上記の6種類以外にも臨床の現場ではデキサメタゾンや,血栓予防として抗凝固薬のヘパリンを頻用している。なお,COVID-19に対する非薬物療法としては理学療法や酸素療法,挿管/人工呼吸管理や体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)などがある。それだけでも膨大な内容となるため,本稿では割愛する。


[PDF] COVID-19治療薬デキサメタゾンの類縁物質分析

複数のRCTでTCZによる死亡率の低下は認められなかったが、侵襲的酸素投与又は死亡に至った患者割合を評価したEMPACTA試験ではTCZの有用性が示された。また、REMAP-CAPグループ主導で実施された大規模な非盲検ランダム化アダプティブプラットフォーム試験やRECOVERY試験でもIL-6阻害薬の有用性が示されており、これらのプラットフォーム試験とRCTsの結果の差異は、治療体系の変化に伴いデキサメタゾンの併用率が大きく異なることが一因と考えられる。これらの知見を踏まえ、NIHガイドラインでは、人工呼吸器/高流量酸素を要する患者や、急速に酸素化の悪化を認めCRP値等の炎症マーカーの上昇を認める患者等に対して、デキサメタゾン併用下でのTCZ (8 mg/kg[最大800 mg/body]単回静脈内投与) 投与推奨が追記され、FDAは、人工呼吸器、ECMO管理含めた酸素投与を要し、ステロイド投与を受けている入院中の成人および2歳以上の小児COVID-19患者に対する本剤の緊急使用許可を2021年6月24日に発出した。国内では、非盲検単群国内第Ⅲ相試験(J-COVACTA 試験:JapicCTI-205270)が企業治験として実施されており、今後承認申請について規制当局と協議予定とのことである。

• ただし,酸素需要が不要な COVIDー19 患者に対するデキサメタゾンには生存率の悪化.

には2021年1月10日時点においてCOVID-19の治療に対して使用される主な薬剤を示す(適応未承認薬も含める)。COVID-19に対してはさまざまな薬剤が での効果やスクリーニングにおいて候補薬剤として挙がっているが、我が国においてCOVID-19に対して承認された治療薬はレムデシビル、デキサメタゾンのみである。レムデシビルは主な副作用に肝機能障害、下痢、皮疹、腎機能障害などがあり、デキサメタゾンは高血糖や消化性潰瘍などに注意が必要である。さらにCOVID-19においては合併症として血栓塞栓症に関する報告もあり、未分画ヘパリンや直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant;DOAC)などの治療薬も使用されることがある。また、COVID-19に対して適応承認はされていないものの、シクレソニドなどの吸入薬が使用されることもあることから適切な吸入手技の確認も必要となる。また、COVID-19に対して使用する薬剤、特に経口薬や吸入薬に関しては漫然とした長期使用とならないよう処方された薬剤に対して使用目的をきちんと把握して適正使用状況を確認することは非常に重要と考える。

現在、COVID-19 による感染症は世界中に広がっている。デキサメタゾンは WHO と厚生労

(serum albumin)は血漿の中で最も豊富に見られるタンパク質だが、デキサメタゾンも他の薬やホルモンと同様にこの血清アルブミンによって身体全体に運ばれる。ところがこのタンパク質に関する因子のため、COVID-19に関連する炎症を治療するときに安全で効果的となるようデキサメタゾンを投与するのは難しい。例えば、糖尿病の患者では、タンパク質中の重要なアミノ酸に対して糖化(glycation)の過程を経て糖分子が結合していることがよくある。こうなると薬のタンパク質への結合が妨げられことがある。イブプロフェン(ibuprofen)のような一般的鎮痛剤なども血清アルブミン上にある同じ結合部位を使い競合するので、同時に服用するとデキサメタゾンの輸送が妨げられる。さらに、肝臓病、栄養失調、高齢などのCOVID-19の危険因子に加え、ウイルス自身も患者の血清アルブミン濃度を下げることがある。この複雑な事情により、内科医が血中におけるデキサメタゾンの遊離:結合の相対比を見積もり、薬の毒性増加、副作用、薬効の低下を招く可能性について判断するのは難しくなっている。

[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 4 1

薬であるデキサメタゾンの構造は天然のコルチゾールの構造と非常によく似ている。このことにより、デキサメタゾンは糖質コルチコイド受容体にぴったりと結合し、同じように体内の炎症を解消する遺伝子発現の変化を引き起こす。この活性のため、デキサメタゾンはCOVID-19の治療において特に効果的である。なぜなら、コロナウイルスによる損傷はウイルス自体によるものだけではなく、制御できない炎症によるものでもあるからである。ところが、デキサメタゾンの抗炎症効果は、使い方や時期を誤ると害をおよぼしかねない。COVID-19の初期段階において、身体はウイルスを撃退するために免疫系を動員する必要があるので、初期の重症ではない患者にデキサメタゾンを使うと、うかつにも患者の状態を悪化させてしまうかもしれない。

デキサメタゾン(1 回 6mg 1 日 1 回 10 日間)を投与する。レムデシビルは、原則使用しない。迅

COVID-19に対する有効性について、オックスフォード大学主導で英国にて実施中の大規模な非盲検ランダム化アダプティブプラットフォーム試験RECOVERY試験にて、標準治療群(4321例)とデキサメタゾンを一日6 mg(経口又は静脈内投与)、最大10日間投与する群(2104例)とで28日までの死亡率を比較した結果が公表された。全体集団においても、標準治療群25.7%と比較し本剤群22.9%と、本剤投与にて死亡率は有意に低下したが(年齢調整率リスク比 (RR): 0.83[0.75, 0.93]、p

[PDF] COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版

糖質コルチコイド(Glucocorticoid、グルココルチコイド)の薬は炎症や自己免疫疾患を治療するため広く処方されており、最近ではCOVID-19(SARSコロナウイルス2型感染症)の重症患者の治療にも用いられている。COVID-19は、発熱や息切れなどの症状から、多臓器不全などの重い合併症への急速に進行する。重症患者は「サイトカインストーム」(cytokine storm)を経験するが、このときにはもはやコロナウイルスに対する炎症反応を抑えることはできず、サイトカイン(炎症の分子メッセンジャー)の異常な産生がさらなる合併症を引き起こしてしまう。臨床試験では、糖質コルチコイド受容体に結合する強力な抗炎症薬であるデキサメタゾン(dexamethasone)を低用量で投与することにより、COVID-19入院患者の死亡率が低下したことが示されている。

デキサメタゾンとバリシチニブの優位性の検証は現在行われているところである41]が、標準

2019年末に中国で確認後、急速に全世界に拡散した新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)は、今日に到るまで1億7000万人が感染し350万人が死に到る歴史に残るパンデミックとなっている。このSARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)の治療法開発には多くの研究者と企業が総力をあげてこの一年取り組んできた。抗ウイルス活性が示唆される既存薬のrepositioningの試行に加え、重症例での病態への関与が示唆される過剰免疫の抑制についても各種抗炎症薬の効果を検証する臨床試験が実施されている。しかし、2021年4月時点、本邦でCOVID-19治療薬として承認されているものは、抗ウイルス薬のレムデシビルと、抗炎症薬であるデキサメタゾン、バリシチニブの3剤のみである。

[PDF] COVID-19 の薬物治療ガイドライン version 5 1

デキサメタゾンのCOVID-19市場は、地域ごとに成長しており、特に北米が主導しています。アメリカとカナダは合計で約40%の市場シェアを占め、2023年には20億ドルを超える評価が期待されています。ヨーロッパでは、ドイツ、フランス、英国、イタリアが主要なプレーヤーであり、全体で約30%の市場シェアを持つ見込みです。アジア太平洋地域は、中国、日本、インドを中心に約20%のシェアを見込んでおり、急速な需要の増加があります。ラテンアメリカと中東・アフリカはそれぞれ約5〜10%の市場シェアを占めると予想されています。

[PDF] Covid-19 に対する薬物治療の考え方 第15.1版

デキサメタゾンは、COVID-19の治療において、病院、クリニック、その他の医療機関で広く利用されています。病院では、重症患者の炎症を抑え、人工呼吸器の使用が必要な場合に治療効果があります。クリニックでは、軽度から中等度の症状を持つ患者の管理に使用されることがあります。また、在宅ケアなどの他の医療機関では、軽症患者への早期投与が検討されています。レヴニューの観点からは、病院での使用が最も急成長しているセグメントです。

デキサメタゾン群の参加者の21.6%、対照群の24.6%が、試験登録後28日以内に死

重症化予防効果の有無を検討されてきた他の薬剤を簡単に紹介する。コルヒチン、ブデソニド(吸入)、フルボキサミンは、複数の臨床試験で小さな効果が認められているが、これまで説明してきた薬剤より効果は低いため、優先して使用することはない。また、これらの薬剤は(デキサメタゾンを除いて)、COVID-19に対する保険適用がないことに注意が必要である。