PK-PD理論を考慮した投与設計 時間依存性抗菌薬 効果を高めるには1 ..


この三つのうちどのパラメーターが重要となるかは抗菌薬の種類によって異なる。なぜなら、抗菌薬には「時間依存性」と「濃度依存性」の二種類があるためである。


ペニシリン系抗菌薬は濃度依存性の抗菌薬であり,PK/PDパラメータはT>MIC(%)30~50といわれている. ..

クラリス(一般名:クラリスロマイシン)とはマクロライド系の抗生物質です。従来のマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを改良してできたものであり、ニューマクロライドともいわれています。抗生物質の代表といえるのはβラクタム薬(ペニシリン系、セフェム系等)ですが、マクロライド系も肺炎球菌をはじめとするグラム陽性菌、インフルエンザ菌や百日咳菌など一部のグラム陰性菌、嫌気性菌、非定型菌のマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなど多くの細菌に対して効力を発揮します。いろいろな細菌に有効なので、呼吸器系の領域を中心に多くの診療科で処方されています。多くは咽頭炎・肺炎・中耳炎などに対する処方です。消化器領域ではピロリ菌の除菌薬としても数多く処方されています。皮膚科領域においては、感染を伴う、表在性/深在性皮膚感染症、リンパ管/節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍などの疾患に対して選択されることがあります。

抗菌薬によって、その抗菌作用が何に依存するかが異なる。時間依存性の抗菌薬の場合、「MICの値よりも高い濃度推移を維持した時間」が重要となる。

また時間依存性の抗菌薬は PK/PD 理論から間歇投与するよりも出来る限り投与 ..

そのため、この種類の抗菌薬ではCmax(最高血中濃度)の値は関係なく、MICよりも高い血中濃度で長時間作用させることが抗菌薬の作用を最大化させることができる。また、これを行うことによって、耐性菌の発生を抑えることにも繋がる。

序文

本邦では過去10年ほどで適切な感染症診療への関心と理解が高まり、この影響か日本語で書かれた抗菌薬の使用法のマニュアルが数多く発刊された。これらは日本における感染症診療の質の向上に大いに貢献してきたと考えている。
さて、10年経てば時代も変わる。この10年で起こった大きな変化は、日本の医療全体の大きなうねりと流れを同じくして、感染症診療の世界も多職種協働の枠組みの中で行われるようになってきているということである。つまり薬剤師、臨床検査技師、看護師との有機的な協力の中で診療が行われるようになったのである。
抗菌薬に対する医療者の関わり方は、その職種によってさまざまである。従来発刊された抗菌薬のマニュアルは、その多くが医師が主たる読者で、抗菌薬の臨床現場での使い方に主眼が置かれてきた。それはそれで重要である。近年は薬剤師が感染症診療の現場に積極的に参加するようになり、重要な役割を果たしている。そうすると、抗菌薬のマニュアルにもまた違った一歩進んだ専門的な視点が求められる。添付文書上の用法用量、腎障害・肝障害時の用法用量の設定、他の薬剤との相互作用など、薬剤師が感染症診療に関わるには、医師が関わる以上に患者の背景や投与中の薬剤などの全体像をきめ細やかに把握し、その場において適切で安全な治療の選択に資する内容を提供する必要がある。そしてそのような目配りをしているマニュアルは、翻って医師にも有用である。
本書は上記のような目的を果たすため、薬剤師と医師が協力して執筆した。両職種が互いの得意な領域を出し合うことで、相乗効果を生み、結果的に医療現場でのリファレンスとして大いに役立てていただけることを狙いとしている。単に「分かりやすい」ことを安易にうたわず、現場のプロに役立つ内容とすることを目指したマニュアルである。

2015年5月
大曲貴夫

抗菌薬のPK/PDガイドラインから、PK/PD パラメータには(Cmax/MIC ..

クラリスに最も特徴的なのは、一般的な抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、マイコバクテリウムなどの非定型細菌にも有効であることです。マイコプラズマは肺炎を引き起こすことで有名ですが、皮膚に感染して皮膚に治りにくい傷を作る原因になることもあります。またクラミジアは性感染症の原因となり、外陰部に痛みや痒みを引き起こします。マイコバクテリウムは皮膚の下で膿を作り、ジクジクとした傷を引き起こす原因菌です。これらはどれも稀な病気で抗生物質が効きにくいのが特徴ですが、クラリスは比較的よく効きます。またクラリスが改良される前の薬であるエリスロマイシンには胃酸によって効力が落ちるという弱点がありましたが、クラリスは胃酸の影響をほとんど受けません。体内にしっかりと吸収されるため、1日2回の服用で十分な治療効果が得られます。その他の特徴として、クラリスはアレルギーを起こしにくいとされています。βラクタム系の抗生物質に対してアレルギーがある人でも使用可能です。ただし他の薬と相互作用を起こしやすいので、飲み合わせには注意が必要です。

それに対し、濃度依存性の抗菌薬ではCmax(最高血中濃度)が重要となる。どれだけ高い血中濃度になったかを考える必要があり、長時間作用させることは耐性菌を発生させやすくする要因になる。

薬の投与量が少なかったり,不適切な投与法のためと思われる.ここでは最近の PK/PD 理論

薬剤師をしていた1990年代、感染症治療で選択される薬が、医師によって明らかに違うことをよく経験した。どうしてこんな違いがあるのか聞いてみると、“私の指導医が、このような抗菌薬の使い方としていたので”とのこと。当時抗菌薬の点滴も、朝夕1日2回とか3回という指示で間隔をあけるように指示があっても、看護師サイドの都合もあり、1日2回の投与は、朝は10時、夕は16時なんてことも普通にあった。薬学部時代、生物薬剤学で薬物血中濃度の理論を学ぶのであるが、臨床現場で血中濃度を測定していたのは、抗てんかん薬やジギタリスなどの一部であった。それから約10年後、医師になった私は、たまたま感染症診療で有名な藤本卓司先生の元、研修指導を受ける機会に恵まれた。研修前のオリエンテーションで、vancomycinの血中濃度を薬剤師が測定し、濃度が不適当であったら連絡があること、またその年から抗菌薬の投与指示は、薬物血中濃度の理論から、時間指定して投与するように説明があった。そのとき私は、「やっと薬学部で学んだことが臨床で活かされるようになったんだなあ、長かったなあ」と感動したことを覚えている。当時の医学部でも感染症治療の講義はなく、微生物学の講義を中心に病院実習中に各科で少しずつ勉強するくらいで、系統立てて感染症を習ったことはなかった。臨床で唯一頼みにしていたのが青木眞先生の名著、「感染症診療レジデントマニュアル(第1版)」くらいであった。その後、藤本先生をはじめ、若手を中心としたさまざまな先生方が臨床にすぐ活用できる感染症の本を次々に発売された。本屋に行くと、以前は選択肢がなくて困ったのに、いまでは逆にありすぎて選ぶのに困る時代になった。本当に、ここ10年で感染症診療は劇的に変化した。便利になった反面、まだまだ感染症診療を専門とする医師を育てる研修施設は少ない。また、都市部の大病院を除き、その他中小の病院には頼りになる専門の医師はほとんどいない。その穴を埋めるべく、今では感染症に関わる多くの専門薬剤師が、医師の代わりに抗菌化学療法の適正使用に、その能力をいかんなく発揮する状況になりつつある。
このような状況のなか、今回「抗菌薬コンサルトブック」が南江堂から発売された。まず表紙をめくって執筆者一覧をざっとみたところ、感染症で有名な医師の方々以外に、薬剤師もその執筆名に名を連ねているのが目に留まった。これは今までの本にはあまりなかったことである。さらに頁をめくると、他書とは違う際立った特徴が目についた。それは、私にはとても懐かしいものでもある構造式や、薬物動態、蛋白結合率、相互作用などである。これらは薬剤師の本来得意とするところで、実臨床においても必要不可欠な情報であり、それらがコンパクトにまとめられ網羅されていた。
このような今までの感染症マニュアルと違う視点で、それも医師と薬剤師がともに協力して作り上げたこの「抗菌薬コンサルトブック」を私は待っていた。
私は循環器専門医でありながら、赴任病院に医師が少なかったこともあり、感染症治療もかなり行ってきた。今ではもうほとんど循環器疾患しかみなくなったが、当時このようなマニュアルがあればよかったのにと、本当に残念に思うとともに、今このマニュアルに出会えたことで、現在感染症診療の現場で奮闘している感染症非専門医の医師は本当に恵まれていると心から感じる。誰もが数々ある感染症マニュアルで、心の支えとなっているお気に入りの一冊があるものだ。本書はその1つになりうるのではないかと私は確信し、本書を推薦したいと思う。

臨床雑誌内科117巻3号(2016年3月号)より転載
評者●JCHO大阪病院循環器内科医長 大八木秀和

前回の抗菌薬シリーズ第4回で、腎毒性のあるゲンタマイシンはから考えると1回少量投与で1日数回投与よりも1日1回大量投与の方が、腎毒性が少なく殺菌力も高い安全で有効性が高くなる投与法であると解説した。しかし若い薬剤師や医師の方は当たり前に理解しているPK/PD理論であっても、なぜ「1回少量を1日数回投与」の方が「1日1回大量投与」よりも安全性が低いのかについては理解に苦しむ方がいるのではないだろうか。ここで、抗菌薬のPK/PD理論について改めて説明したい。これらの理論は米国のWillian A Craig先生の研究成果によるもので、2008年の日本TDM学会の特別講演でCraig先生が講演していただける予定であったが、脳梗塞のため来日が急遽中止になったのが非常に残念であったことを思い出す。


[PDF] 〈総 説〉 肺炎治療におけるマクロライド系薬の併用療法を考える

※抗菌薬の作用機序による分類
1.細菌の細胞壁合成を阻害するもの(βラクタム系・グリコペプチド系・ホスホマイシン系)
2.細菌のタンパク合成を阻害するもの(アミノグリコシド系・・テトラサイクリン系・リンコマイシン系など)
3.細菌のDNA・RNA合成を阻害するもの(キノロン系・リファンピシン・スルファメトキサゾール・トリメトプリム)
4.細菌の細胞膜を障害するもの(ポリペプチド系など)

「細菌」の種類は、現在確認されているだけでも6,800種以上、非常に様々なタイプの細菌が存在しています。1つの抗生物質が、これら全ての種の細菌に対して抗菌作用を発揮するわけではありません。
例えば、細胞壁合成を阻害して抗菌作用を発揮するβラクタム系(ペニシリン系・セフェム系・カルバペネム系)の抗生物質は、厚い細胞壁を持つ「グラム陽性菌」には効果的ですが、元から細胞壁が無い「マイコプラズマ属」の細菌には効果がありません

は,クラリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗菌薬が有する細菌の病原因子

MIC(最小発育阻止濃度)とは、「細菌の増殖を抑制するために必要な最小の薬物濃度」を指す。そのため、MICの値よりも抗菌薬の濃度が低ければ菌が増殖してしまう。そこで、PK/PD理論では薬力学(PD)の要素としてMICを利用する。薬物動態のグラフにMICの線を組み合わせることにより、PK/PDのグラフを描くことができる。

PK-PDとは、生体内で薬剤がどれだけ有効に利用され、また作用しているかを考えた ..

とは、「MICの値より低い濃度になっても抗菌薬の作用が持続する作用」を指す。

MICのみに頼ることなく各薬剤の組織への移行性、ブレイク ..

『サワシリン』などのβラクタム系の抗生物質は、時間依存性に抗菌力を発揮します。
つまり、できるだけ長い時間、一定の濃度(最小発育阻止濃度:MIC)以上の薬物血中濃度を維持した方が効果的です。そのため、通常は1日3~4回、1日量をできるだけ複数回に分けて服用します2)。

※時間依存性(time above MIC依存的)抗菌薬
『サワシリン』などのペニシリン系
『フロモックス(一般名:セフカペン)』などのセフェム系
『オラペネム(一般名:テビペネム)』などのカルバペネム系

PK-PD とは、生体内で薬剤がどれだけ有効に利用され、また作用しているかを考え ..

『クラビット』などのニューキノロン系の抗生物質は、濃度依存性に抗菌力を発揮します。
つまり、安全な範囲内でできるだけ薬物血中濃度を高めた方が効果的です。そのため、通常は1日1回、1日量を1回にまとめて服用します3)。

ピシン併用におけるクラリスロマイシンの血中濃度の検討- 【CTD5.3.5.4.2】 ..

時間依存性と濃度依存性
抗菌薬の効果は血中濃度が高くなるとその作用も強くなる。この時、抗菌薬の作用を測る指標としてがある。

・体液中・組織中薬物濃度に基づくことが、より直接的かつ正確で、抗菌薬の作用標的となる感染

※濃度依存性の抗菌薬
『クラビット』・『ジェニナック(一般名:ガレノキサシン)』などのニューキノロン系
『ハベカシン(一般名:アルベカシン)』などのアミノグリコシド系

クラリスロマイシンとして 1 回 200mg(力価)及びランソプラ

これらの知識を踏まえた上で解説していくが、濃度依存性の抗菌薬では「一瞬でも良いので、どれだけ高い血中濃度になったか」が重要となる。そのため、AUC/MIC(AUCに対するMICの割合)やCmax/MIC(最高血中濃度に対するMICの割合)が重要になる。

ゾールとして 1 回 30mg の 3 剤を同時に 1 日 2 回、7 日間経口

それに対して短い持続効果(PAE)をもつ時間依存性の抗菌薬の場合、単純に「MICより高い血中濃度をどれだけの時間維持したか」が重要になる。そのため、Time above MICが重視される。※above:「~より上の」という意味である。

私たちは、気管支の上皮被覆液の臨床薬物動態およびクラリスロマイシンとテリスロマイシンの薬力学を報告した。 報告書

Timeabove MICが重要な抗菌薬は、βラクタム系が該当し、MICを超えている時間が長い方が、結果としてPBPを阻害している時間が長くなるため、頻回の投与が必要となります。

通常、成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)を2

また、時間依存性の抗菌薬の中でも長い持続効果(PAE)をもつ場合、持続効果(PAE)の作用も考慮するために「どれだけの薬が利用されたか」を表すAUCを使用する。そのため、AUC/MICを重視するのである。

床試験においては,非臨床 PK/PD 試験で薬効と相関する PK/PD パラメータ(最大血中濃度/最小発育阻止濃度

濃度依存性抗菌薬のPK/PD
キノロン系など濃度依存性の抗菌薬でPK/PDを考える場合、MIC以外に二つのパラメーターを考慮する必要がある。このようなパラメーターとしてとがある。

セフメタゾール,CAM:クラリスロマイシン, CPFX:シプロフロキサシン

菌の増殖を抑えるためには、MICより抗菌薬の濃度を高くすれば良い。ただし、耐性菌の場合はMICよりも多少抗菌薬の濃度が高かったとしても、生き残って増殖することができる。