[PDF] 黒毛和種繁殖雌牛の分娩遅延の要因と分娩誘起が子牛に及ぼす影響
「じゃあ、非ステロイド使えば良いじゃん!」となりますが、非ステロイド系抗炎症薬にも妊娠牛特有の注意点があるのです・・・・。
今週の動画
獣医師にはどうやってなるの?
[PDF] 副腎皮質ホルモン剤 デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム注射液
以上を、先に挙げた子牛の行動変化目安のなるべく早い段階で実施することが大切です。つまり、5分経っても頭を上げないのであれば、その時点で人の手を介入すべきであり、10分や15分も母牛任せにしてはいけないということです。30分経過しても起立を試みない子牛はより注意が必要であり、呼吸様式にもよりますが、その時点で獣医師による診察を依頼することを推奨します。この「早い段階での対応」が、ゆくゆくは初乳の飲乳欲の有無に繋がり、さらには初乳吸収率の低下も懸念されます。ここでの注意点として、「低酸素血症 ≒ 呼吸が早い」ということで「呼吸が早い子牛はIgG吸収率が悪い」と思われる方も多いかもしれませんが、低酸素状態が軽度〜中等度であれば正常子牛との間に差は無いとする報告も多く(Drewry、1999:Weaver、2000)、IgG吸収率の差は子牛が飲乳欲を示すまでの時間の差であることが考えられています。早い段階で対処すれば、その分「6時間以内の初回初乳給与」が達成される確率が高まるため、結果的に、IgGは効率よく吸収されることになります。
(以下は獣医療者向けに記載しておきます)
生後の胎子は多かれ少なかれ低酸素状態であり、呼吸性アシドーシス(肺でのO2⇄CO2交換が上手くいかない=血中CO2分圧の上昇)と代謝性アシドーシス(筋肉の無酸素運動による乳酸の蓄積)に陥っています。前回お話した様に、寒冷環境や低体温状態は末梢の血管を収縮させ、組織の低酸素状態を招きます。その結果、嫌気的解糖が進行することで乳酸が蓄積し、代謝性アシドーシスとなります。さらに、低酸素状態の進行によって褐色脂肪組織による代謝熱産生も抑制されるため、さらに低体温が悪化します。つまり、新生子牛をレスキューするためにターゲットとなるのは、マクロには「低体温」と「低酸素症」ですが、よりミクロに細分化して見ていった場合「呼吸性アシドーシス」と「代謝性アシドーシス」を改善することだと思います。代謝性アシドーシスは呼吸様式の改善と共に比較的早期(生後1-4時間)に改善されますが、呼吸性アシドーシスは48時間持続することもあると報告がある(Caster、1994:Kasari、1994)ので、呼吸様式の改善のみではなく、ミクロに見た「肺胞における肺換気能力を最大化させる」ことが必要です。過去から多くの報告で、呼吸性アシドーシスではIgG吸収能力が低下し移行免疫不全(FPT:Failure of Passive Transfer)に陥りやすいとされていますが、その一方で、生後1時間における呼吸性アシドーシス(PaCO2 ≥ 50mmHg)の有無は生後25時間の血中IgG濃度に影響しないとする報告(Drewry、1999)もあり、一定の見解が得られていません。現在のところ、代謝性アシドーシスが改善され6時間以内に哺乳(自発的な飲乳)が完了されれば、多少の呼吸性アシドーシスは大きな問題にはならないと考えられます。
なお、獣医師が往診依頼される時は往々にして「肺の換気能力を最大化させる」と同時に「致死的な状態への対処」が求められますが、その様な時に用いられる薬剤による化学的方法の一例を以下に挙げておきたいと思います。
● コルチゾール製剤(デキサメサゾン注など:デキサメサゾン1-2mg):肺サーファクタントの産生促進
● クレンブテロール製剤(*)(プラニパート:塩酸クレンブテロール30-40µg):気管支拡張
(*牛では難産時の子宮平滑筋弛緩薬だが、人医療分野では気管支喘息など気道閉塞性障害に基づく呼吸困難など諸症状の緩解)
● ジモルホラミン製剤(テラプチクなど:ジモルホラミン45mg):呼吸興奮、循環興奮
● アドレナリン製剤(*)(ボスミン注など:アドレナリン0.2mg~1mg):心停止からの回復、心拍増強、血圧上昇、気管支拡張による呼吸量増加
(*添付文書に従い、適宜生理食塩水で希釈して少量から利用する)
● 重曹(*)(7%重曹注:50〜100ml/40〜50kg):代謝性アシドーシスの改善
(*代謝性アシドーシスは呼吸様式の改善に伴い自然改善されることが多いため、慎重投与。呼吸器機能が正常に働いていることが前提であり、そうでない場合は心肺機能の改善を優先する。呼吸性アシドーシスに対しては禁忌であり、中枢神経系アシドーシスや細胞内アシドーシスを引き起こす)
枯草菌(バチルス・サブチルスDB9011株)を高濃度に配合した子牛用生菌剤です。
今回デキサメタゾンの牛に係る残留基準(ppm)が引き下げられます
以上の時間を一つの目安として、「6時間以内に体重の5%以上、理想は10%(*)」を飲める状態にすることが必要です。
(*以前のコラムでは「5%以上」とだけ記載していましたが、こちらはあくまで基準量=最低量であり、理想値として10%というのを付記する様にしました。同様に、12時間以内では10%以上/理想量15%、24時間以内では15%以上/理想量20%となります。誤解を招きやすい表現であったため、以前のコラム内容も訂正しております:2021年3月10日)
この目標時間を達成するために、何より重要なのが、前回の繰り返しになりますが、低体温の予防と低酸素血症の改善です。特に、低酸素血症の改善が重要です。暖かい環境に子牛を置いて、自発呼吸が行われていることは一部前提としますが、それも含めて、具体的な戦略を考えてみましょう。
(1)低体温の改善・予防:
・体毛の乾燥(タオルやドライヤー)
・ジェットヒーターによる暖気送風
・乾燥した牛床環境
・温室(20〜25℃)への移動
・お風呂(その後の乾燥まで必須、臍帯感染に注意:クリップで止めておく)
(2)低酸素血症の改善(無呼吸または弱い自発呼吸への対応):
・口鼻周辺の羊膜・羊水の除去
・首を伸ばして気道を確保
・人工呼吸器を用いた羊水吸引と送気
・(頭部をやや低くした状態での)頭部への冷水刺激
・鼻腔へのくしゃみ誘発刺激
・酸素マスクの装着
・胸骨座位への姿勢誘導
・開胸運動による人工呼吸
・(心拍停止の時)心臓マッサージ
寒冷ではない環境で健康に生まれてきた子牛であれば、前回までで紹介してきたような蠕動を促進する方法は必要ありません。むしろ、起立して初乳を飲むために母牛の乳頭を探す行動を始めると、その間に口や鼻から環境中の病原体がたくさん子牛に侵入してしまうリスクすらあります。その様な場合は、すぐに子牛専用の綺麗な環境(乾燥した長わらが敷かれた消毒されたハッチなど)に移動させて初乳を与えるか、母牛と同居させる場合でも、(綺麗な環境であることは当然として)子牛がいつ哺乳を始めてもいいように、乳頭と乳房は綺麗に拭いて乾燥させ、雑菌の多い乳頭内の生乳は3-4回の手搾りで廃棄することが望まれます。
健康な子牛であればこの様に、適切なタイミングで起立し、適切なタイミングで初乳を摂取できますが、ではその「適切・標準的なタイミング」はいつなのでしょうか?そうではない状態を見極めるにはどうすれば良いのでしょうか?
標準的な生後子牛の行動変化と生理的変化は、以下の図の様であると考えられています。
(1) 本改正によって、牛に対するメタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリ
デキサメタゾンなどのステロイド系抗炎症薬は、強力な抗炎症作用を有します。しかし妊娠牛に使用すると胎盤等に作用し、エストロジェンやプロスタグランジンF2α合成促進により流産や早産を起こすことがあります。つまり、妊娠牛への使用は基本的にNGです。
デキサメタゾンは、強力な抗炎症作用、抗アレルギー作用、および糖新生作用を持つグルココルチコステロイドです。
4)広井信人,牛の分娩誘起における母牛および産子の品種別にみた産子娩出時間と分娩事故防止.
しかし妊娠牛における抗炎症薬の使用には、少し注意が必要です。妊娠牛特有の副作用が、抗炎症薬の種類に応じて存在するのです・・・。
まず方法は、ホスミシン2gを生食20mlほどで希釈し(炎症の程度に応じてデキサメタゾンを1ml程混ぜることもあります)、ハッチに入る程度の子牛であれば5ml程、150kgを超えるくらいの牛には10ml程を注射器を使用して気管内に直接注入するというものです。
[PDF] 寒冷下での新生子牛への酵母細胞壁混合飼料給与による体
説明: デキサメタゾンは、強力な抗ロジスティック、抗アレルギー、およびを有するグルココルチコステロイドです グルコン遺伝性作用。 適応: アセトン貧血、アレルギー、関節炎、滑液炎、牛のショックおよび腱周囲炎、ふくらみ、 ヤギおよび羊。牛の抗炎症性および抗アレルギー物質として使用できます。 山羊および牛の原発性ケト症の治療に使用されます。 用法・用量: 筋注または皮下投与の場合: 牛: 5-15mL 子牛、羊、山羊: 1 ~ 2.5ml ラクダ: 10-20mL 副作用: すべての病原体に対する耐性が低下します。 ...
ステロイド類の中で特に多いものは、牛でデキサメタゾン、プロゲステロン、テストス ..
さて、今回は皆さん一度は悩まされたであろう牛の肺炎、この病気に対する“気管内注射”という治療法についてお話ししたいと思います。