睡眠覚醒リズム障害のメラトニン療法 (神経研究の進歩 45巻5号)


2023年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本から米国へ移動する際に日本代表(侍ジャパン)の佐々木朗希投手がメラトニンを含むグミを食べたことで、機内で熟睡できたエピソードが披露されている。寝る前にメラトニンを服用すると寝つきが良くなる効果は確認されているが、不眠症に対する改善効果は乏しいことが分かっている。


的として注目されており、これまでメラトニンに類似した化合物が睡眠障害の治療薬として開発 ..

メラトニンは夜間に分泌され、睡眠の誘導や概日リズムの制御に関与するホルモンです。分泌されたメラトニンは、膜受容体タンパク質であるGPCRの一種のメラトニン受容体に結合し、メラトニン受容体がGiタンパク質三量体を介して細胞内に抑制性シグナルを伝達することで、最終的に睡眠の誘導などの生理作用をもたらします。これらの生理作用の重要性から、メラトニンおよびメラトニン受容体は、睡眠障害などの治療標的として注目を集めており、多くの作動薬が開発され、臨床に用いられていますが、これらの薬剤がどのようにしてメラトニン受容体に作用してシグナルを伝えるのかに関してはあまり分かっていませんでした。

元々人間の体内時計の周期は、25時間程度となっています。そのため、地球の自転周期である24時間とは多少のズレがある状態なのですが、このズレを、太陽光・食事・運動などの刺激に触れることで、自然に修正しています。しかし、海外旅行や夜間勤務などといった人為的・社会的な理由で体内時計を無視した場合は、体内のリズム調整機能と、外界の環境周期が同調できなくなってしまい「外因性概日リズム睡眠」を発症する原因になりかねません。また「内因性概日リズム睡眠」の場合は、睡眠相前進/後退型とも呼ばれ、人為的・社会的な要因がないにも関わらず、体内のリズム調整がうまくできない状態です。特に高齢者が発症しやすい極端な早起きは、睡眠相前進症候群に該当します。

メラトニンは、不眠障害の入眠困難及び概日リズム睡眠-覚醒障害群の睡眠相後退型に対する

近年、X線結晶構造解析によって、睡眠障害の治療薬が結合した状態でメラトニン受容体の立体構造が報告され、薬剤の認識機構などが解明されました。しかし一連の構造解析では、受容体の安定化のために様々な変異が導入された、生理活性を示さないような変異体が用いられていました。そのため、受容体を活性化状態にする作動薬が結合しているにも関わらず不活性化型の構造を示しており、生理的な状況を反映していない状態でした。以上から、メラトニン受容体がリガンドによって活性化するメカニズムは不明なままであり、治療薬の開発に求められる詳細な作動メカニズムは解明されていない状況にありました。

約24時間周期で繰り返す生物学的リズムを「概日リズム」(サーカディアンリズム)と呼びます。概日リズムの乱れがパーキンソン病の睡眠障害とも密接に関係しているとも云われています。
夜間の眠りを誘う「睡眠ホルモン」として脳の松果体という部分から分泌されるメラトニンがあります。メラトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンからセロトニンを経て体内合成されます。パーキンソン病患者さんではことが知られており、結果としてすることになります。

メラトニンリズム非後退型の睡眠・覚醒相後退障害の臨床的特徴に関する検討 ..

なお、メラトニンはそれ以外にも、抗酸化作用などに関わっていると言われていて、アメリカなどではサプリメントとして幅広く売られています。

概日リズム睡眠障害が疑われる場合は、医師による問診と、場合によっては睡眠日誌や活動量計を用いる一日の体動量変動の調査などを行います。これらによって、睡眠と覚醒のパターン・睡眠障害の判断・概日リズム睡眠・覚醒障害であればどのパターンに当てはまるか、などを判断し、治療の方針を決めていきます。具体的な治療法は、以下の通りです。

ンスがあるのは、不眠障害の入眠困難及び概日リズム睡眠-覚醒障害群の睡眠相後退型とされ

人の生体リズムは多くの動物と同じように生物時計によって駆動され、約25時間の周期(概日リズム)で活動と休息のリズム信号を出しているが、地球の自転により24時間周期で変化する外部環境とは約1時間のズレが生じる。生物時計はこのズレを修正し、概日リズムを24時間の環境変化に同調させる機能も持つ。通常、起床直後に太陽光が目から入ると、その光信号は視交差上核(suprachiasmatic nucleus:SCN)、上頚神経節を経由して、松果体にたどり着く。すると、食事で摂取して血液中にあるトリプトファンというアミノ酸が分解されてセロトニンが産生され、メラトニンがつくられる。このとき、N-acetyltransferaseという酵素が活性化されてはじめてメラトニンが生合成されるのであるが、N-acetyltransferaseは光があると活性が抑えられ、この代謝が行われないようになっている。したがって、外界が暗くなったときに、N-acetyltransferaseが活性化されて、メラトニンができるのである(図1、図2)。
こうして生物時計によってリセットされた時刻から10~12時間は代謝が高められ、血圧・体温も高めに保持され、覚醒して活動するのに適した状態になる。これが朝の光を浴びてから13時間くらい経過すると、松果体からメラトニンの分泌が始まり、手足の末端からの放熱も盛んになる。こうした放熱により深部体温が低下してくると、1~2時間のうちに自然な眠気が出現する。つまり、太陽光に対する生物時計のリセット機能により、朝起床して太陽光を最初に浴びた時刻に応じて夜に眠気が出現し、自然に眠くなる時刻が決定されるのである。朝の起床時に充分な太陽光を浴びなかったり、暗い部屋で昼過ぎまで眠っていると、こうした概日リズムのリセットが適切に行われず、その日の入眠時刻が遅くなる。一方、夕方から夜の時間帯に強い光を浴びると、昼の時間が延長することになり、休息への準備が遅れ、結果的に入眠時刻が遅れることになる。

体内時計の周期を外界の24時間周期に同調させられないために起こる睡眠の障害を「概日リズム睡眠障害」


再公表特許(A1)_内因性メラトニン分泌リズム改善用機能性食品

メラトニンは朝の光を浴びて14-16時間後に増えてきて、その作用で深部体温が低下し、休息に適した状態に導かれ眠気を感じるようになります。治療としてパーキンソン病患者さんへ高輝度光療法*を行うことにより、概日リズムの位相がシフトし睡眠障害が改善したとの報告もあります{文献:Bright light improves sleep in patients with Parkinson's disease: possible role of circadian restoration, Scientific Reports vol10, Article number: 7982 (2020) }。

体外からのメラトニン補充は概日リズムの調節に役立ち、視力障害児における睡眠障害の管理に広く用いられている。 目的

●メラトニンの過剰症と欠乏症
睡眠に関わるホルモンのため、メラトニンが過剰にありすぎても不足しても生活リズムが崩れる可能性があります。
また、卵巣機能の異常や排卵抑制、子宮収縮抑制などのホルモンに作用する可能性があり、妊娠中や妊娠を望む方が高濃度のメラトニンを摂取すると発達障害のリスクが増えてしまう恐れがあります。

正式な名称は、「DSPS(睡眠相後退症候群)」や「CRSD-DSPT(概日リズム睡眠

概日リズム睡眠障害には、夜勤や時差の大きい地域への飛行などによる外因性の急性症候群(交代勤務と時差症候型)と、生物時計あるいはその同調機構の障害によって睡眠スケジュールを望ましい時間帯に合わせることが困難な内因性の慢性症候群(睡眠相後退型、事由継続型、睡眠相前進方、不規則睡眠覚醒型)がある。

多くの生物でメラトニンは生体リズム調節に重要な役割を果たしています。 ..

●メラトニンの生成
通常、メラトニンは松果体にてトリプトファンからセロトニンを経て体内合成されます。このため、まずはトリプトファンを多く含む食材から摂取する必要があります。
メラトニンが生成される量は光量にも関係するため、普段の生活から朝に太陽の光を浴び、夜間は就寝前や就寝時には周囲をできるだけ暗く保ち、一日のリズムをつくる必要があります。日光を浴びるのが難しい場合は、照明などの人工的な光を上手に工夫することで、メラトニンの生成をスムーズにすることが可能です。

眠り、リズムと健康② | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

睡眠相後退症候群(DSPS)の特徴は、「夜型人間」あるいは「宵っ張りで朝寝坊」などと表現されるように、なかなか寝付くことが出来ず、お昼ごろにならないと起きられないことです。

ては分泌ピークが偏移し,振幅も低下しており,体内時計機構に即したアプローチが求められる.光環境を調節し,

非24時間睡眠覚醒症候群は、日常生活にどんな影響を及ぼしますか。

[PDF] 122. 松果体メラトニンによる網膜の光感受性抑制機構の解明 池上 啓介

脳の松果体ホルモンの「メラトニン」の受容体に結合して、催眠作用や睡眠リズムを調節するお薬です。受容体はM1受容体とM2受容体の2つが存在し以下の作用を行っています。

本指針では,最初に睡眠学会前理事長のお立場から清水徹男先生に「不眠症の概念」についてまとめてもらっ

市販のメラトニンの製品において、メラトニンの含有量がラベル表示量を満たしていない場合があること、そして、セロトニンが混入している製品があることが、報告されています。

メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプタミン〔N-acetyl-5 ..

治療にはメラトニン受容体作動薬を中心に、必要に応じて睡眠薬やビタミンB12などの薬剤を用います。さらに光治療を行ったり、心理的な要因が大きいと診断されたりした方には、臨床心理士によるカウンセリングもおすすめしています。

ンは、概日リズムの調整、体温調節、睡眠誘導、抗酸化、免疫調節、抗ストレスなど、様々

時差のある地域にジェット機で短時間に移動すると、到着後に睡眠・覚醒障害、頭痛、消化器の不調、めまいなど心身の不調が出現する。これが時差ぼけあるいは時差症候型と呼ばれる状態である。原因として、かつては機内の閉鎖的環境による心理的影響や、空気の乾燥、長時間の座位、不規則な居眠りなどの影響が重視された。しかし、時差のない南北飛行ではこうした症状が起こらず、東向きと西向きでは症状の起こり方が異なることなどから、出発地の時刻に合っていた生物時計と到着地における睡眠・覚醒スケジュールがずれることにより起こることがわかってきた。
実際にジェット機で時差帯域を飛行し現地に到着すると、われわれは到着地の時刻に合わせて生活しようとする。しかし、生物時計が作り出す概日リズムは、容易には変化しないため、しばらくは飛行前の日本のリズムを刻み続ける。このため、到着地の夜には、概日リズムの機能によりまだ身体が活動に適した状態にあり、睡眠をとろうと試みてもぐっすり眠れない。一方、到着地の昼は、日本から持ち越した概日リズムにより、身体が休息状態にあるため、活動中に眠気や疲労感が生じやすい。たとえば、ニューヨークと日本のように地球の表裏の位置関係にある地域への移動である場合、到着地の生活リズムに適応するのに10日~2週間はかかると言われている。
交代勤務に関連した睡眠障害も同様の機序で生じると考えられている。

[PDF] メラトニン受容体のシグナル伝達複合体の構造を解明

・M1受容体:神経を抑制したり、体温を低下させることなどにより睡眠を促します。

パーキンソン病の方に役立つ基礎知識vol.25 日中の過度の眠気

「内服して短時間のうちに脳の機能を低下させる事によって眠りに導く薬」と「毎日飲んで自然な眠気を徐々に強くする薬」です。これまでの説明は「内服して短時間のうちに脳の機能を低下させる事によって眠りに導く薬でした。改良を重ね副作用の低減を積み重ねましたが、2010年に「毎日飲んで自然な眠気を徐々に強くする薬」が販売されました。2021年現在では4つの種類があります。メラトニン受容体作動薬のロゼレムとメラトラベル、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラとデエビゴになります。メラトニンは体内時計に働きかけることで、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。メラトニンは脳の中にある松果体という部位から夜の20時頃から分泌されはじめ、深夜をピークに、朝になり太陽の光をあびると分泌されなくなる物質です。メラトニン受容体作動薬はメラトニンの分泌を促すお薬になります。従来の睡眠薬に高頻度で発現していた依存、耐性、反跳性不眠がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導するお薬です。オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつです。オレキシン受容体拮抗薬は、その「オレキシン」の働きを弱めることによって眠りを促す、新しいタイプのお薬です。こちらのお薬も従来の睡眠薬に高頻度で発現していた依存、耐性、反跳性不眠がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導するお薬です。その一方で効果はソフトでマイルドなため、即効性の効果が優れる印象はありません。どちらも自然な眠気を強めるため、

人間の身体は概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ばれる1日 24 時間の周期で、体温調節やホルモン分泌

長い休暇で夜更かしをして遅くまで寝ている習慣がつくと、仕事を再開するとき朝なかなか目が覚めず、つらく感じる。これを我慢すると、通常は2~3日のうちに早くに寝つけるようになり、必要とされる時刻に起きられるようになるが、睡眠相後退型にはそれができない。患者は1)日中の行動や心理状態とかかわりなく朝方まで入眠できない、2)いったん入眠すると比較的安定した睡眠が得られ、遅い時刻まで起きられないが目覚めた際に不快感はない、3)長期間にわたり睡眠改善の努力をしてもうまくいかない、の3つの特徴がある。努力して無理に起床しても、午前中はぼんやりとした状態が続き、1~2日でもとの夜更かし・朝寝坊の生活に戻ってしまう。睡眠時間帯の遅れのために定刻に出勤・登校することが困難なため、社会生活に大きな支障を来たす。
思春期から青年期に発症することが多く、夏休みなどの長い休暇中の昼夜逆転生活、受験勉強などが発症の誘因となる。臨床的にみても、睡眠相後退とともに、最低体温出現時刻やメラトニン分泌リズムが健常人に比べて遅れていることがわかっている。
他に睡眠時間帯が毎日およそ1時間ずつ遅れていく自由継続型、睡眠時間帯が通常より極端に早まり修正できず、20時ごろには起きていることが困難となる睡眠相前進型、高齢者に多く、睡眠と覚醒の出現が昼夜を問わず不規則になる不規則睡眠・覚醒型がある。不規則睡眠・覚醒型については後で詳述する。